「万物は毒であり毒でない物は存在しない。用量のみがそれを決める」

毒性学の父と呼ばれる中世の錬金術師パラケルスス(1493 - 1541)の言葉です。

この言葉が示すようにあらゆる物質は摂取量により毒になり得るうえ、その量は個人/生物種により異なります。

  

北里大学獣医学部毒性学研究室は

  • AlphaFold2に代表される構造科学手法・分子シミュレーションによる毒性標的タンパク質の発見というケモインフォマティクス×毒性学の分野横断型研究
  • 環境汚染物質が引き起こすヒト・野生動物(哺乳類に加え鳥類や魚類も対象)への毒性影響を種々の実験手法を駆使して解明する「環境毒性学」研究

の2本柱で研究を展開しています。

Our Mission

現在、高残留性のフッ素化合物PFAS類による水質汚染が連日報道されるなど環境汚染はいまだ深刻な問題であり、持続可能な開発目標:SDGsにも含まれる国際的な課題です。化学物質への感受性には大きな動物種差があり、同じ物質であっても動物種によってその毒性影響の程度は異なります。そして、これは時として環境汚染物質による野生動物の大量死 「ケミカルハザード」の原因となります。


また、医薬品や化粧品・サプリメントなどパーソナルケア用品の開発に際しても予期せぬ副作用の発現は大きな障害となります。古くはサリドマイド薬害、令和の世でもサプリメントに混入したプベルル酸による致死的な腎障害が全国規模の社会問題となりました。このように毒性発現を未然に防ぐ、原因を迅速に究明する事が毒性学研究の責務です。


私達は獣医学部の特色である複数の動物に対する医学知識と、コンピューターシミュレーションなどの多彩な実験手法を組み合わせた分野横断型研究を通し、本来侵襲的な実験を行う事が困難な野生動物の化学物質感受性の評価や事前予測が困難である毒性標的タンパク質の特定・毒性発現メカニズムの解明に挑戦しています。

研究内容

主な研究テーマ

  • 構造科学と分子シミュレーションを用いた化学物質結合標的タンパク質の特定法の開発
  • 環境汚染物質・毒性懸念物質の曝露試験と病理組織学的探索・マルチオミックス解析による毒性評価
  • 分子シミュレーション技術・機械学習による野生動物の非侵襲的毒性評価
  • 製薬/農薬企業との新薬開発・安全性評価・標的探索に関する共同研究
  • 小笠原諸島の固有種など希少生物種に対する環境汚染物質の毒性評価