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論文掲載のお知らせ:AlphaFold構造プロテオームへの網羅的分子ドッキングによる毒性標的探索手法を開発!
このたび、当研究室の研究成果が日本毒性学会が刊行している査読付き国際科学雑誌The Journal of Toxicological Sciences(Vol. 50, No. 7)に掲載されました!
論文タイトルは:
「Comprehensive molecular docking on the AlphaFold-predicted protein structure proteome: identifying target protein candidates for puberulic acid」
訳:AlphaFoldで予測したタンパク質構造プロテオームへの網羅的分子ドッキング:プベルル酸の標的候補タンパク質の同定」
著者:Teppei Hayama, Rin Sugawara, Ryo Kamata, Masakazu Sekijima, Kazuki Takeda
研究の背景
化学物質の毒性標的を特定することは、毒性学における大きな課題です。
つまり、化学物質が毒性を持つかどうかはマウス等実験動物への曝露試験、あるいは培養細胞への曝露試験で比較的容易に評価できます。
しかしながら、我々ヒトは20000種超ものタンパク質を持つため、その毒性がどのようにして(どのタンパク質に結合する事で)生じるかを突き止めるのは容易ではありません。
例えば、致死的な腎障害が深刻な社会問題となった紅麴サプリメント中有害物質プベルル酸も、齧歯類への曝露試験で腎障害が起こる事は比較的早期に検証された反面、その作用機序・標的タンパク質は未だ不透明です。
これに対し今回の研究では、AlphaFold2で予測されたタンパク質構造プロテオームを活用し、ヒトが持つ20000種超の全タンパク質に対して網羅的な分子ドッキングを行う事で標的タンパク質を推定する新規コンピューターシミュレーション手法を開発しました。
そしてこのアプローチをプベルル酸にも適用し、潜在的な標的候補を探索しました。
研究のポイント
高スループット分子ドッキング:ヒトとマウスのタンパク質約2万種に対してGPU並列計算を実施。
構造科学×毒性学の融合:AlphaFold2モデルを活用し、既知の副作用データベースに依存しない予測を実現。
プベルル酸標的候補の提示:腎臓の浸透圧調節に関わるナトリウム/ミオイノシトール共輸送体(SMIT2)が有力な標的であることを提案。
Binding Proteomicsの提案:化学物質の結合標的を全プロテオームレベルで探索するin silico手法として新しい枠組み“Binding Proteomics”を提示。
なぜ重要か?
この研究で開発したBinding Proteomics解析は、
未知化合物や新規メカニズムの毒性評価
野生動物やマイナー種の感受性評価
など、従来困難だった予測に大きな可能性を開きます。
また、本手法はGitHubで公開中であり、誰でも再現・応用が可能です。
📢 本研究は、薬物や環境化学物質のリスク評価に新たな選択肢を提供します!
ラボでは今後、この解析を応用した全種プロテオーム対応のBinding ProteomicsやAIとの統合モデルにも取り組んでいきます。
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