研究業績

Pesticide Biochemistry and Physiology 199, 105767 (2024)
Sensitivity assessment of diphacinone by pharmacokinetic analysis in invasive black rats in the Bonin (Ogasawara) Archipelago, Japan

著者

Kazuki Takeda*, Keita Shimizu, Miyu Sato, Masafumi Katayama, Shouta M.M. Nakayama, Kotaro Tanaka, Yoshinori Ikenaka, Takuma Hashimoto, Ryuichi Minato, Yusuke Oyamada, Kazuyuki D. Tanaka, Goro Kimura, Tsutomu Tanikawa, Keisuke Kato, Taichi Kusakabe, Mayumi Ishizuka, Ryo Kamata

カテゴリ

学術論文

Abstract

【小笠原諸島に生息する外来クマネズミにおける薬物動態解析を用いたダイファシノン感受性評価】 小笠原諸島は、独自の生態系を有する日本が誇るユネスコ世界自然遺産である。しかし、固有種を捕食する外来齧歯類の存在が大きな問題となっている。環境省により散布された抗凝固性殺鼠剤ダイファシノンは防除効果を挙げてきた一方、反復使用は殺鼠剤抵抗性の発達につながる。本研究では、2022年2月に小笠原諸島で捕獲されたクマネズミ(Rattus rattus)を対象として、in vivo薬物動態/薬力学(PK/PD)解析および生理学的薬物動態(PBPK)モデリングにより、ダイファシノンに対する感受性を評価した。 小笠原由来クマネズミでは、ダイファシノン投与後に凝固時間の延長が認められたものの、感受性クマネズミよりも早期に回復した。このことから、小笠原由来クマネズミは感受性が低下していることが示されたが、ダイファシノンの標的酵素をコードする Vkorc1 には遺伝子変異は認められなかった。ジファシノン投与後、ビタミンK還元酵素として同定されている Fsp1 の肝臓における発現量は低下したが、小笠原由来クマネズミではその抑制が最も軽度であった。 薬物動態解析の結果、小笠原由来クマネズミの排泄能は、抵抗性クマネズミよりも低かった。PBPKモデリングでは、抵抗性クマネズミは高い肝代謝能により、小笠原由来クマネズミおよび感受性クマネズミと比較して高いクリアランスを示した。一方、小笠原由来クマネズミは、吸収が遅く、クリアランスも比較的低い特徴を示した。 本研究により、小笠原諸島に生息する野生クマネズミでは、in vivo表現型レベルで殺鼠剤に対する感受性が低下する傾向が明らかとなった。一方で、肝代謝能の亢進や Vkorc1 変異といった既知の殺鼠剤抵抗性機序は認められなかった。殺鼠剤感受性を正確に評価するためには、生体レベルでの継続的なモニタリングが重要である。