研究業績
Environmental Toxicology and Chemistry 43, 10, 2176–2188 (2024)
Assessment of the Aryl Hydrocarbon Receptor–Mediated Effects of Aromatic Sensitizers in Paper Recycling Effluent Employing Zebrafish Embryos and in Silico Docking
著者
Kazuki Takeda*, Aoi Sarata, Masanori Terasaki, Akira Kubota, Keita Shimizu, Ryo Kamata*
カテゴリ
学術論文
Abstract
芳香族発色剤およびその関連物質(Aromatic sensitizers and related substances: SRCs)は、製紙産業において発色および顕色反応を促進する上で重要な化学物質であるが、紙のリサイクル工程において排水中へ非意図的に混入する。これらは、内分泌かく乱作用を有する芳香族有機化合物と構造的に類似していることから、水生生物に対する潜在的な有害影響が懸念されている。本研究では、アリール炭化水素受容体(AHR)を介したSRCsの影響に着目し、分子ドッキングシミュレーションおよびゼブラフィッシュ(Danio rerio)胚への曝露評価を実施した。
分子ドッキング解析の結果、紙リサイクル排水中に含まれる一部のSRCsは、SRC毒性機序において重要な構成要素であるゼブラフィッシュAhr2およびヒトAHRに対して、高い結合親和性を示した。受精ゼブラフィッシュ卵を受精後96時間までSRCsに曝露したところ、これらの物質のうち、ベンジル2-ナフチルエーテル(BNE)は、胚発生過程において比較的低濃度(1 μM)で、心膜浮腫や体長短縮などの形態異常を引き起こした。また、BNEにより、シトクロムP450 1A(cyp1a)および ahr2 の遺伝子発現も有意に増加した。
一方、AHRアンタゴニストであるCH-223191との共曝露では、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシンによる影響がCH-223191によって比較的良好に回復したのに対し、BNEによる表現型への影響は部分的にしか軽減されなかった。この結果は、BNEがAHR非依存的な毒性機序も有することを示している。さらに、BNEを含む一部のSRCsは、in silico解析においてエストロゲン受容体への結合親和性を示すとともに、cyp19a1b 遺伝子発現を増加させた。
以上より、SRCsの毒性およびその作用機序について、さらなる知見の蓄積が必要である。本研究の結果は、製紙産業による環境影響を最小限に抑える上で、SRCsおよびその他の製紙関連化学物質に関する重要な情報を提供するものである。