研究内容
全タンパク質構造プロテオームへの網羅的分子ドッキング計算による薬剤結合標的タンパク質発見"Binding Proteomics解析"

毒性学とは医薬品や化粧品、天然毒から環境汚染物質まで種々の化学物質の毒性影響を評価する学問ですが、毒性学における難問題は毒性標的タンパク質の同定です。
というのも毒性影響(副作用)自体は動物実験を通して比較的簡単に観察する事が出来ますが、何故その毒性が生じるのか(=生体内でどの標的タンパク質に結合してその作用が生じるか)というメカニズムについては種々の分子生物学実験で証明するしかないためです。ヒトをはじめ哺乳類は20000種以上のタンパク質を持つためその全てに対して薬剤の結合力を実験的に評価する事は現実的に困難です。
一例として、近年大きな社会問題となった紅麹サプリメントでの健康被害がファンコーニ症候群という腎障害だと判明したのに対し、その原因物質と見做されているプベルル酸の毒性メカニズム・標的タンパク質に関する報告が乏しい事を想起すると納得いただけるかと思います。
これに対し当研究室では、各生物が有する20000種以上のタンパク質のほぼ全ての立体構造に対し目的の化学物質の結合力を網羅的に分子ドッキングシミュレーションで計算し、結合標的タンパク質の候補を予測するBinding Proteomics解析を作出しました。
本手法はGitHubに公開済でありGPU搭載PCにダウンロードし実行可能です。
https://github.com/toxtoxcat/reAlldock
また、本手法による結合標的タンパク質の発見に関する受託研究・共同研究のご依頼もお気軽にお問い合わせください(連絡先:takeda{@}vmas.kitasato-u.ac.jp)。
本手法を活用してプベルル酸の標的タンパク質がミオイノシトール関連タンパク質である可能性を提唱した研究成果をプレプリントとしてBioRxivで公開しました。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.01.30.635827v1
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本研究成果を第7回日本毒性学会医薬品毒性機序研究会(2025年1月)で発表した菅原琳さん(学部5年生)が優秀発表賞を受賞しました。